Dassault Systèmes2020年第3四半期の決算を発表 – ソフトウェアの売上げは引き続き減少
(2021.2.5,2.6 更新 : 為替相場変動による誤差を修正)
ダッソー・システムズ(Dassault Systèmes)は2020年9月30日、第3四半期の決算を発表しました(プレスリリース)。
この中で同社は「業績は好調(strong performance)」としていますが、数字を分析してみると、実際には今年から加わったMedidataの売上を新たに加えたことによる売り上げ増と、コスト削減による利益の増加、という内容であることがわかります。
既存(Organic)ビジネスの推移を見ると年初からの売上減少傾向に歯止めがかかっておらず、第4四半期(10-12月期)予想を見てもこの傾向からの改善の兆候は見えません。
もちろんこれにはCOVID-19も大きく影響しているでしょう。
一方、COVID-19にあまり影響を受けないとみられるMedidataについても、今年に入ってからは売り上げが増加している様子は見えません。
但し、安定した定期ライセンス収入や継続するコスト削減の効果により、保守的な予測を基にしている年間(1-12月期)の全社利益目標の達成は難しくないと見られます。
以下がその詳細です。
新規ライセンス売上の推移
Dassault SystemesのSoftware Revenueは” Licenses and Other software revenue” (以下 “新規ライセンス”) と、” Subscription and Support revenue”(以下”定期料金”)の合計です。
Medidataの売上はほとんどすべてが定期料金のカテゴリーに含まれます。
よって”新規ライセンス”は基本的にCATIA, ENOVIA, SOLIDWORKS等の既存ビジネス(Organic)によってもたらされるものです。
四半期ごとの新規ライセンス売上高のグラフは次の通りですが、各期の変動が大きい(例えば毎年期末の第4四半期にはビジネスが集中する)ので、直近4期の移動平均のグラフも併記しています。また、今回発表になっている今年第4四半期の目標値も入れてあります。
移動平均のグラフからわかる通り、2020年の第1四半期から売上は下降に転じており、今回発表された第4四半期の目標売上額を達成したとしても、さらにこの下落傾向は続くことになります。
今年COVID-19の影響があったことは間違いなく、現時点ではまだ下落の傾向が改善する傾向にはありません。
定期料金non-organic (=Medidata)の売上推移
2019年Dassault Systemesは約50億ユーロでMedidata Solutionsを買収し、今年からその収益も定期料金の一部(non-organic)として組み入れられています。
そのMedidataの収入の推移は、定期料金総額から既存ビジネス(Organic)の定期料金を差し引くことでおおよそ計算できます。
そのグラフは次の通りです。
定期料金 organic (=既存ビジネス)の売上推移
次のグラフは定期料金のorganic(=既存ビジネス)の各期および各4四半期移動平均のグラフです。
引き続き増加しているものの、特に2020年に入ってからは上昇率がゆるやかになっているのがわかります。
収益(Net Income)の見込み
今回Dassault Systemesから公表されている資料を検討すると、仮に第4四半期の売上目標を達成できなかったとしても、若干のコスト削減上乗せなどにより収益目標(EPSなど)の達成はそれほど難しいことではない、と当方では分析しています。これは、安定した定期料金収入と統制の取れたコスト管理、さらに保守的なプランニングによるものです。
まとめ
2020年のDassault Systemesの売上げは、新規買収による増収分を除けば減少傾向にあります。
これは既存ビジネスがCOVID-19の影響により悪化したことを反映したものですが、一方で大型買収により取得したMedidataの収益も十分には伸びていない可能性があります。
安定的に推移している保守料金収入やコスト削減効果により年間利益目標の達成は可能とみられますが、中長期的なビジネスの発展を考えると、既存ビジネスを早期に再度成長軌道に乗せることと買収ソフトウェアの収入安定化を短期間に実現することが重要と考えられます。