ホンダ、製品図面データ交換に「STEPXML+JT」を実務適用中、日産でも実用化へ
データ交換はCADデータから標準データへ
2022年3月24日(木)に開催された「JAMA デジタルエンジニアリングWebセミナー2022」で、ホンダが2021年5月から協力会社との3DデータやPMIを含む製品図面データ交換にSTEPXML+JTを実務適用していることを明らかにしました。
日産もSTEPXML+JTを用いたOEM-OEM間のPDMデータ交換の実用化を進めている、としています。
従来は各OEMごとに特定のCADデータをデータ交換に利用していましたが、今後はCADの種類に依存しない標準フォーマットが会社間のデータ交換に活用されるとともに、社内でも様々なアプリケーション間の標準フォーマットとして活用が広がる可能性があるとみられます。
日本自動車工業会(JAMA)セミナーで現状の報告
「JAMA デジタルエンジニアリングWebセミナー2022」は、自工会の「デジタルエンジニアリング分科会活動」を紹介するセミナーです。
その1タスクである「DEデータ流通基盤検討タスク」の活動報告の中で、同タスクリーダー 高村知昭氏(本田技研工業(株))は、『従来日本の強みであった「人のスキルや能力を活用したコミュニケーション」から、「3Dデータを活用した効率的なやり方」に世界では進化しつつある中で、日本でも企業が協調してこの変革を進める必要がある』と指摘、JAMAとして企業間の協調領域である標準方式について検討を開始しており、今後も継続してゆく、と述べました。
従来のCADデータを利用する方法は、複数OEMとの取引がある部品メーカーにとっては大きな負担となっていました。
また、OEM社内でもさまざまなアプリでのデータ活用が制限されるという課題がありました。
データの規格としては、世界標準でもあるSTEP AP 242 (ISO 10303-242)を利用し、PDM-IF(PDM Implementor Forum)が提唱するその実装ガイドラインを参照しています。
PDM-IFとは、国際的なユーザーとサプライヤーのグループで、具体的な参加企業は以下の通りです。
User Groupとして
- Airbus
- BMW
- DAHER
- Dassault Aviation
- GALIA (Stellantis)
- GIFAS
- The Boeing Company
- Safran Group
Implementor Group として
- Beta CAE
- CoreTechnologie
- Dassault Systèmes
- Datakit
- Elysium
- PDTec
- PROSTEP AG
- T-Systems
このグループは以下を目標として活動しています。
- 国際的なPDM相互運用性 の推奨プラクティス文書を作成し、国際的なPDM相互運用性標準を完成させる
- 合意された信頼できる方法に基づいて、PDM領域で共有テストの活動を実施する
PDM-IFの詳細は http://www.pdm-if.org/welcome で公表されています。
日産とホンダの実例
日産のケースでは
PDM-IFのガイドラインを参考にして、Daimler, Renault, 日産の3者間でSTEPXML+JTを用いたPDMデータを交換できる仕組みの実用化を進めています。
ホンダのケースでは、
PDM-IFの規格に準拠している部分に加え、ホンダ独自の管理情報などの規格外属性用XMLを付加してパッケージファイルHPDFを定義し、これを用いたデータ交換を2021年5月から実務適用している、としています。
ホンダは昨年開催されたElysiumのオンラインイベントでも講演を行っていますが、その中でも
Standard Formatの活用を今後も進めてゆく予定であり、これが外部ドメインとのコラボレーションのキーである、としていました。
但し現状では以下のような課題もあるとしています。
- OEMの属性ルールがまだ統一されておらず、各社の異なるデータモデルが流通している
- まだSTEPの対応はツールによりレベルが様々であり、実際にはやってみないと(うまくいくかどうか)わからない、というのが現実
同タスクではこれらの解消に向けて2024年度まで活動を予定しています。
従来、自動車製造各社では特定CADのデータを中心としたシステムの構築が進んでいましたが、今後はこれらにとらわれずに全社でのDX推進を進める方向になるでしょう。
また部品メーカーでは取引先とのデータ交換に合わせて高価なCADシステムを導入することが必要となっていましたが、こちらも今後は自社の業務に最適なシステムを構築することが優先される方向に進むものと考えられます。