ダッソーシステムズ、製造業向けビジネス成長の道筋は?- Capital Markets Day 2022

2022年6月16日にダッソーシステムズ (Dassault Systèmes)はアナリストや株主を対象として同社の事業状況を説明する「Capital Markets Day 2022」を開催しました。
その中で同社は、2024年に向けた計画は順調である、としていますが、製造業向け事業の収益はやや計画を下回っており、アナリストからは2024年の1株利益目標を引き上げられなかったのは期待はずれ、とのコメントも出ています。
今後に向けて新たな企業買収や提携などが検討されている可能性があります。

「Capital Markets Day 2022」- EPS目標の上方修正はなし

2022年6月16日にダッソーシステムズ (Dassault Systèmes)の Capital Markets Day 2022がフランスの本社で開催されました。同イベントは2020年11月以来の開催です。
このイベントは金融アナリストと株主を対象としたもので、経営陣が同社の事業、戦略、目標について一連のプレゼンテーションを行いました。
その中で同社は、”2024年の非IFRS EPS目標達成に向けて軌道に乗っており、重要な長期成長機会を生かすことができる位置にあります。”としています。

しかし投資家向けメディアであるSeeking Alphaは今回発表された内容について”FXの追い風(EUR/USDレートが前回発表時の1.20が今回1.04に引き下げられた)にもかかわらず、前回発表した2024年度のEPS目標である1.20ユーロを今回引き上げることができなかったため、数字の面では期待外れであった”とコメントしています。

製造業向けビジネスの見通しは

前回発表時と比較して、現時点で2020年時点での収益の計画値を下回っているため、今後3年間でこの後れを取り戻す必要もあります。
そのため同社の主力ビジネスである製造業(Manufacturing Industries)市場向けビジネスについて、前回は毎年6-8%の成長を計画、としていましたが、今回の発表では今後毎年9-10%の成長を計画、となっています。ちなみに、同ビジネスの2018年以降の成長率は年4%に届いていません。
他のビジネス分野であるライフサイエンス&ヘルスケアについては13-15%成長、都市・インフラについては12-14%成長、と前回の計画から変更はありません。

3DEXPERIENCE戦略の状況

前回のプレゼンテーションと比較すると、今後の成長の要因をまとめたスライドから「3DEXPERIENCE PLATFORM」が削除されています。

具体的には、これからの企業価値を向上させる要素をまとめた「Value Up」のスライドの中で、3項目の筆頭として挙げられていた”3DEXPERIENCE ADOPTATION”が今回姿を消しています。この項目の指標としては「ソフトウエア収益に占める3DEXPERIENCEの割合」を挙げていました。
また「Value Wide」のスライドでは、やはり3項目の筆頭に挙げられていたMainstream Adoptation(指標は3DEXPERIENCEのライセンス収入の割合)が無くなっています。
つまり、今後の成長の要であるとしていた3DEXPERIENCEの推進について、明確な状況説明や今後の見通しが示されていません。

PLM業界の状況

同イベントの中で、同社は市場規模が引き続き拡大しているとしています。
ただ、シェアを維持することは必ずしも容易ではありません。
同社の成長は既存の大手客先からの安定した収益をベースにしたものでしたが、今後もそれが継続するとは必ずしも保証されていません。

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今後の見通し

以上の状況で、ダッソーシステムズは次の戦略としてどのようなことを考えているのでしょうか。
ダッソーシステムズCOOのDaloz氏のプレゼンテーションの最後のページには次のようなスライドが使われています。
タイトルは”SOMETHING IS HAPPENING…”
そして、タイトル以外の部分は”白紙”です。
これは、未発表の買収案件が控えている、という可能性を想像させるものです。

Seeking Alphaも次のようにコメントしています。
“バランスシートに30億ユーロの現金と短期投資があり、経営陣は、これまでの成長ストーリーの重要な要素である有機的投資を補完するために、より多くの資産を取得する余地があります。”

しかし単なる補完的ソフトウエアの買収では、メインのターゲット市場である製造業向けの状況を根本的に変えることは難しいかもしれません。
以上のような全体の状況を考慮すると、今後大規模なプラットフォームとの連携など、大掛かりな対応がとられることも考えられます。

まとめ

ダッソーシステムズの「Capital Markets Day 2022」で発表された2024年の利益予想は一部の市場の期待に応えるものではなかったものの、同社の事前の利益予想が常に保守的であることを考慮すると、あまり悲観的なものではないのかもしれません。

しかし一方で、製造業向けのビジネス状況や3DEXPERIENCEビジネスの状況を考えると、大規模な買収や提携などの大掛かりな対応が今後必要とされる可能性も考えられます。

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