ダッソーシステムズ2021年第2四半期決算 成長の文字が並ぶが実態は

2021年7月27日、ダッソーシステムズ (Dassault Systèmes) は2021年第2四半期の決算を発表しました。
その中で、収益の増加や利益の増加について強調されていますが、比較の対象は業績が悪かった昨年(2020年第2四半期)であり、2年のスパンで見ると主要エリアで成長は見られず、業界全体の成長を下回っています。

発表内容と分析

2021年7月27日、ダッソーシステムズは2021年第2四半期の決算を発表しました。

Dassault Systèmes Reports Strong Second Quarter Results

この中で述べられている通り、新型コロナウイルスの影響で業績が悪化した前年同期(2020年第2四半期)との比較で「ソフトウェアの収益は15%増加し、ライセンスの収益は38%増加しました」。

しかし、コロナ前の一昨年(2019年第2四半期)と比較すると、その間に買収したMedidataの収益を除けば、総収益はほとんど増加しておらず、ライセンス収益は減少しています(248.5M€=>223.1M€)。

ソフトウエア売上を製品ライン別でみると、主力のCATIA, ENOVIA等を含むインダストリアル・イノベーション(Industrial Innovation)は前年からは回復しているものの、まだ2年前のレベルには戻っていないことがわかります。(下図参照)

Industry Innovation Revenue

一方で、ソリッドワークス(Solidworks)を主体としたメインストリーム(Mainstream Innovation)とMedidataなどを含むライフサイエンス(Life Science)については比較的順調に推移しています。

ダッソーシステムズ 3つの製品ライン

ダッソーシステムズのソフトウエア製品の売上は3つの製品ラインにカテゴライズされています。

インダストリアル・イノベーション (Industrial Innovation software)
ハイエンドの3D CADやPLMソフトウエア群である主力のCATIA, ENOVIA, SIMULIA, DELMIA各ブランドが含まれます。他にも GEOVIA, NETVIBES, 3DEXCITE ブランドを含みます。
これらを合わせて今期はソフトウエア売り上げの約55%を占めます。

ライフサイエンス (Life Sciences software)
MEDIDATAとBIOVIAブランド
ソフトウエア売上の約20%

メインストリーム・イノベーション (Mainstream Innovation software)
いわゆるミッドレンジのソリッドワークス(SOLIDWORKS)を中心とした3DEXPERIENCE WORKSファミリーに加えて、CENTRIC PLM, 3DVIAブランドを含みます。
ソフトウエア売上の約25%

売上比率が最も高く、大企業を中心に高いシェアを保ち、安定した利益に貢献し、次世代の中心戦略である3DEXPERIENCEの最重要ターゲットとなっているのがインダストリアル・イノベーションです。

以下、今回はダッソーシステムズの基幹事業であるこのインダストリアル・イノベーションの状況にフォーカスして考察します。

インダストリアル・イノベーションの状況

まず上記のインダストリアル・イノベーションの売上履歴のオレンジ色のライン(売り上げの四半期平均)を見ると、すでにコロナ前の2019年4第四半期にはすでに収益の上昇が止まっていることがわかります。

市場全体に目を向けると、世界のPLM市場はコロナ下の2020年においても3.8%成長しており、2021年も7.5%成長を見込んでいます。(CIMdata社による)

参照 CIMdata Publishes PLM Market and Solution Provider Report

一方ダッソーシステムズのインダストリアル・イノベーションは2020年がー4.3%とマイナス成長、2021年も現時点の予測としては前年比4.5%程度のプラス(つまり前々年比でほぼフラット)で、市場の成長に追いつくことができません。

つまり、ダッソーシステムズのインダストリアル・イノベーション製品群(CATIA, ENOVIA, SIMULIA, DELMIA等)は伸び続けるPLM市場の中でコロナ以前の約2年前から売上を伸ばせておらず、シェアを低下させ続けていることになります。

以上見てきた通り、ダッソーシステムズのインダストリアル・イノベーション製品の売上はコロナ前の時期から停滞しています。

今回の決算発表資料を見ても、ハイライトとして挙げられている例はライフサイエンスやメインストリーム関連のものが中心で、本来中心であるはずの3DEXPERIENCE関連としてはアルストム(フランスの鉄道車両メーカー)の事例が見られるくらいです。

また、この分野に関して提携、買収などについては小規模のものばかりであまり活発な活動は見られません。
今後回復の方向に向かうことができるのか、引き続き動向が注目されます。

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