ボルボ、CADプラットフォームをPTCに統合へ。既設CATIAはどうなる?

PTCとボルボ・グループがデジタル・エンジニアリングのコラボレーションを発表

2021年9月27日 、PTCとボルボ・グループ(Volvo Group)は、デジタル・エンジニアリングに関する協力関係をさらに強化する計画を発表しました。ボルボ・グループは、CADプラットフォームを統一することを決定し、PTCの製品はボルボ・グループで完成車設計に使用される主要なCADおよびPLMソリューションとして位置づけられます。

ボルボ・グループ(Volvo Group)は、トラック、バスを中心に、建設機械、船舶用エンジンなどの事業を展開する年間売上4兆円を超える多国籍企業です。(乗用車を手掛けるボルボ・カーズ(Volvo Cars)は現在中国の浙江吉利控股集団有限公司(ジーリーホールディングス)傘下にある別の会社です)

Volvo Truck

ボルボ・グループのCTOであるLars Stenqvist氏は「CADプラットフォームを中心にPTCと提携することで、世界レベルの能力を共同で構築します。これは、ボルボが持続可能な輸送とインフラの将来像を追求する上で、今後何年にもわたって競争上の優位性となることを期待しています」と述べています。

全社的エンジニアリング・プロセスの最適化へ

また同氏は「1つのPLMおよびCADプラットフォームを使用することは、当社のデジタル・エンジニアリング・トランスフォーメーションにおける重要なイネーブラとして機能します。」「この基盤を活用して、PTCのIOTやARソリューションを我々のデジタルスレッド戦略に接続することに大きな可能性を感じています。」とも述べていて、今回の決定の目的が、単にCADの統一ということだけでなく、最新のテクノロジーを活用した全社的なエンジニアリング・プロセスの最適化であることを示唆しています。

現在、製造業各社は、単なる詳細設計ツールとしての3次元CADの活用から、部門や企業を超えたデータの活用、という新たなレベルを目指しています。
これらを実現するために、従来部門や業務ごとにバラバラであったシステム環境を統一することでより広くコラボレーションを可能にすることも検討されています。

エンジニアリングに関する情報提供サイトEngineering.comでは、今回のボルボの決定について「大きな驚きではない」としています。(記事へのリンク)
その理由は、ボルボはすでに「近年、WindchillのPDMソリューションをCADファイルのキャビネットとして使用するだけでなく、BOMや変更管理ソリューションなどの収集にも取り組んでいる。」という状況にあったから、と説明しています。

ボルボでは、上記CTOのコメントにあるように、IoTやARとの連携や活用を推進するなど、全社的プロセスのひとつのインフラとしてPTCソリューションの活用が進めるものと思われます。

ダッソーシステムズのCATIAはどうなる?

Engineering.com ではこの記事の中で「ボルボはキャビンの設計にはCATIAを利用していたが、これらはCREOに置き換えられることになる」とも述べています。
同サイトでは今回の件を一例として、自動車産業でCATIAがおかれた状況が厳しいものになっている、とも指摘しています。
「CATIA V6バージョンまたは3DEXPERIENCEは、自動車での突破にかなりの困難を抱えています。」

ただ、今回のボルボのケースについて言えば、必ずしも自動車産業全体の代表例とは言えないかもしれません。
自動車各社はCATIAを主に複雑な3次元自由曲面処理が必要な乗用車のボディー設計の用途で導入を進めてきた経緯があります。
ボルボは乗用車部門をすでに売却し、現在は商用車に特化したメーカーとなっているので、乗用車ボディーのような繊細な曲面モデリングは不要で、CATIAに対する強い動機付けが無くなっている、という面もあります。

PTCのプレスリリース 「PTC and Volvo Group Announce Digital Engineering Collaboration」

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