アディティブ・マニュファクチャリング : 世界の事例 医療編 – MITレポートより
MITから発表されているレポートより、アディティブ・マニュファクチャリングの世界の活用事例を主なメリット別に2回に分けてまとめました。
今回は医療、医療機器関連についてまとめています。
(産業編はこちら)
別の記事でも紹介した通り、MIT Work of the futureのレポートのひとつとしてアディティブ・マニュファクチャリング(AM)の現状分析と今後への指針についてまとめたものが発表されています。
カスタマイズ性
「AMは特に臨床に適しています。医療行為は患者の個々の生理学、解剖学、文脈に合わせて行わなければならないため、AMの本質的な柔軟性は医療分野への応用に適しています。例えば、人工関節やその他のデバイスへのAMの使用は、大幅に拡大しています。」
「NIH(アメリカ国立衛生研究所)は現在、印刷可能な義肢装具のリポジトリをホストしており、拡張性のあるAM対応の義肢装具に焦点を当てたいくつかの新興企業やボランティア組織が出現しています。」
「世界中で何十万人もの患者が、金属製のAMプロセスで製造された股関節インプラントを受けています。
「整形外科用インプラントの幾何学的複雑さとその価値の高さから、将来的には(すべてではないにしても)かなりの部分のインプラント製造にAMが使用されることが予想されます。」
「AMの可能性の最も説得力のある例の一つは、患者専用の歯列矯正用リテーナーを製造しているAlign Technologies社です。
Align Technologiesは、完全にデジタル化された生産ワークフローを使用しています。まず、患者の口のスキャンから始まり、スキャンデータをデジタル化して、最終的な歯並びを記述します。これらのエンドポイントをもとに、患者の歯を希望の歯並びに整列させるために、徐々に力を加えていく一連のリハビリ用リテーナーが作成されます。同社は、世界中の患者のために毎年何百万本ものカスタムリテーナーを製造しており、AMでなければ考えられないような規模で大量のカスタム化を実現しています。」
「AMはフィット感と音質を向上させたカスタム補聴器の大量生産を可能にします。その結果、マテリアライズのラピッドシェルモデリングソフトウェアがリリースされてから500日以内に、すべての主要な補聴器メーカーがAMのみに切り替えました。」
眼鏡フレームは、お客様がスタイル、サイズ、色の組み合わせを自由に選択できるようになっています。
医療や医療機器開発のプロセス革新
「AM は、直接的な医療介入以外にも、特に地理的に離れた場所やサービスが行き届いていない場所では、病院の運営を維持するために利用される可能性があります。
ケニアの8つの農村部の医療施設のレビューでは、AMは、従来から供給されている部品のリードタイムが許容できない場合にギャップを埋めるために利用できること、また摩耗した機器のスペアパーツを満たすためにも利用できることがわかりました。
将来的には、3Dプリンティング(特に外科手術や患者・医師の関与)の使用は、日常の臨床と区別がつかないものになる可能性があります。臨床現場の中に、あるいは臨床現場に非常に近い場所にAM機器を組み込むことで、AMを利用したカスタマイズされた治療パスウェイを利用できる患者の範囲が広がる可能性があります。」
COVID-19への対応も
COVID-19への対応では、個人用保護具、人工呼吸器の部品や付属品、偶発的な感染のリスクを最小限に抑えるための消費者製品の製造など、様々な場面でAMが導入されました。」
例えば、「ハーバード大学、マサチューセッツ工科大学(MIT)の教員が、Desktop Metal、Formlabs、Carbon などの企業と共同で開始した、既存の生産インフラと、鼻咽頭スワブの生産用に事前に認定された医療グレードの材料を迅速に活用したプロジェクトは、開始からわずか数週間で週に何百万本もの綿棒を生産する結果となりました。」