ダッソーシステムズ、2020年第4四半期と年間の業績を発表 – 既存事業の実情は

既存ビジネスの売上減少傾向が続く- 年間では前年比 19%マイナス

ダッソーシステムズ(Dassault Systemes)は2020年第4四半期と年間の業績を発表しました。
業績予想の上限での結果を残した、という趣旨の発表になっていますが、内容を検討すると注意が必要な点もいくつかあります。

Dassault Systèmes Reports 2020 Fourth Quarter Results

発表内容についての注意点

公表されたプレゼンテーション資料とプレスリリースでは、次の項目がハイライトとして挙げられていますが、それぞれ注意すべき点があります。

「FY20 revenue up (2020年総売上) +12% (ex FX) to €4.5bn」
Medidataの売上げを11月と12月しか計上していない2019年の数字と、通年で計上している2020年の数字とを比較しています。既存ビジネスのみで計算すれば、売上は前年比マイナスとなります。(恒常為替レートで-3%)

「FY20 EPS(1株当たりの利益) up +3% to €3.77」
non-IFRS(国際会計基準ではない)による計算です。IFRS(国際会計基準)ベースでは、€1.86となり、前年比20.5%マイナスとなっています。

「Fulfilling commitment to retain all employees (全従業員の定着に向けたたコミットメントの達成) – R&D headcount +10%」
R&D関連の社員数は8,900名から9,818名へと確かに10.3%増加しています。しかし一方でR&D以外、すなわちMarketing & Sales関連とG&A(一般管理)関連は合わせて12,316名から11,679名へと、5.2%減少しており、大幅な人員削減が実施されています。

「Strong Medidata performance」
具体的なMedidata単体売上の数字は示されていません。

発表内容のポイント

以上を考慮した上で、重要なポイントを客観的にまとめると以下のようになります。

新規ライセンス販売は引き続き減少
第4四半期の新規ライセンス販売(New License)は前年比 -12%と既存ビジネスの下落傾向は変わらず、通年でも前年比 -19%と減少しています。

定期料金(Subscription and Support Revenue)について
既存ビジネスでは新ライセンスの保守料上乗せなどにより通年で約5%増加、
さらに新規ビジネスのMedidata分の上乗せにより、全体で25%増加。

サービスビジネスは第4四半期22%減少、通年で9%減少

以上の結果、年間総収入では既存ビジネスで-3%, 買収ソフトウェア(Medidata)込で+12% (いずれも恒常為替レート基準)

1株当たりの利益
買収に伴うR&D人員の増加はあるものの、セールス、マーケティングの人員削減などのコスト削減によりnon-IFRSでの1株当たり利益(EPS) €3.77を確保。しかし買収により取得した資産の再評価による償却額などを考慮したIFRS基準では€1.86となり、前年比-20.5%。

2021年の展望

今回の発表では2021年第1四半期(1-3月), 年間(1-12月)の目標も公表されています。

これによると、第1四半期の新規ライセンス(既存ビジネス)は昨年比でプラス0-5%(恒常為替レートベース)を想定しています。
総売上でも0-2%の増加と保守的な見通しです。
これら直近の状況についてはパイプライン管理により確度の高い予想ができているはずで、実現の可能性が高いと思われます。

年間では総売上で6-7%の増加という目標です。そのために新規ライセンスは13-15%増が必要と見込んでいるので、第2四半期からは新規ライセンス、すなわち既存ビジネスも以前のような増加トレンドを取り戻す必要があります。
Medidataも14%の増加を見込んでいます。
これらの目標値については第1四半期の業績発表の際にその先の見通しが示されるものと思われるので、これらに注目する必要があります。
コストについては2020年中に削減している効果もあり、上記の売上向上が実現できれば€4.1以上(non-IFRS)というEPSも目標達成が可能でしょう。

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