ボーイング、エアバスなど協同でデータモデル案を提案
MBDのデータ標準要件を航空機業界が公表
コンピューター上に製品モデルを構築しMBD(Model Based Development)を実現することで、製造業の設計・生産などのプロセスは効率を大幅に向上させていますが、まだ改善の余地は大きく残されています。
航空機産業はこうした面で最も進んだ業界のひとつですが、これをさらに進展させるために必要となるデータ項目のリストを作成しています。
主要企業が共同で「型式設計認証のための最小モデルベース定義 “Minimum Model-Based Definition (MBD) for Type Design Certification”」というドキュメントを発表し、ソリューションベンダー等に対応を求めています。
航空業界のものではありますが、内容や進め方については他の業界にも参考となる点も多く含まれています。
ボーイング、エアバスをはじめとする航空業界各社が共同で開発
2021年2月2日-Aerospace&Defense PLM Action Group(AD PAG)は、3Dモデルベース定義(MBD)型式設計認証に必要なデータ項目の詳細な要件のリストを公開しました。
AD PAGはCIMdata のPLM Community Program の中にある航空宇宙・防衛関連企業の団体で、会員にとって重要なPLM関連のトピックについて、航空宇宙・防衛産業の方向性を示す役割を担っています。
今回公表されたドキュメントは、以下の航空機OEM企業8社とTier1サプライヤー1社のドメインエキスパートで構成されるチームによる2年間の努力の集大成です。
- エアバス(Airbus
- ボーイング(Boeing)
- エンブラエル(Embraer)
- ガルフストリーム(Gulfstream)
- ロールス・ロイス(Rolls-Royce)
- GEアビエーション(GE Aviation)
- 三菱リージョナルジェット(Mitsubishi Regional Jet)
- プラット&ホイットニーカナダ(Pratt & Whitney Canada)
- サフラン(Safran)
レポートには、OEMのMBDの要件リストが記載されています。航空機の3DMBDモデルに必要な200を超える特定のデータ項目が含まれています。
背景
MBDはすでに広く活用されていますが、一方で引き続き進化を続けています。
現在の問題の一つは、設計・開発パートナーとの大規模でグローバルな分散型サプライチェーン内でのコラボレーションが、従来のドキュメントベースの開発プロセスに依存しているということです。
これは各社の認証プロセスを推進する上で非常に大きな問題です。
内容
2017年に開始されたこの特別プロジェクトは、型式設計認証(Type Design Certification)のための最小モデルベース定義(MBD)を目標にしています。つまり、認証に必要なフル3D MBD定義に必要な最低限の内容に合意し、その情報を表現するための推奨基準のセットに合意することでした。
MBDデータセットには、すべての設計意図要件(プロセス仕様書、幾何学的寸法公差(GD&T)、製品および製造情報(PMI)、その他の必要な情報など)が含まれています。
この製品データセットは、製品ライフサイクル管理属性、部品リスト、および一般的な注意事項と組み合わせることで、従来のような2D図面を含まない、またはそれに依存しない、信頼性の高い単一のマスター製品定義データを構成しています。
また、MBDデータセットは、製品の基準寸法だけでなく、許容される誤差その他の許容基準を定義しており、製品ハードウェアの計画、製造、検証に必要なすべてのデータを提供しています。
サポートするユーザーシナリオ
以下の4つのユーザーシナリオをベースに検討を実施しています。
- 目視での組立と検査
- フィーチャーを利用した製造
- 品質管理のための統計的工程管理(SPC)
- 認証機関へのテクニカルデータパッケージの提出
人間とコンピュータが解釈可能で、一貫性があり、これらを利用するシステムにとって必要な情報を提供することを目標としました。
部品タイプ情報
各MBDに取り込まれる情報は、製造方法によって定義される部品パーツタイプによって異なります。
そこで、以下の部品タイプの情報要件を分析しました。
- 一般部品 (General Part)
- 機械加工部品 (Machined)
- 鋳造・鍛造・成形部品 (Casting/Forging/Molded)
- 板金部品 (Sheet Metal)
- コンポジット (Composite)
- 電線ハーネス (Electrical Wire Harness)
- メカニカルシステム – チューブ搬送エレメント (Mechanical System – Tubing Transport Elements)
- 構造物のアセンブリ・組立(Structural Assembly/Installation)
さらに今後も部品タイプを追加していく予定、としています。
当ドキュメントでは53ページにわたってそれぞれのタイプについて詳細情報が記されています。
ソリューションプロバイダーへの要望
これらの多くは、すでにPLM ソフトウェア プロバイダーの商用製品ソリューションに実装されているもののまだ不十分である、として、各プロバイダーに各社の見解を明らかにするよう求めています。
今後の予定
グループの今後の予定として、各ソリューション製品の評価や、各種標準の検討を進める、としています。
具体的には次の例が挙げられています。
- プロセスおよびメソッド(例:ASME Y14.x)
- データモデルおよびフォーマット(例:ISO 10303、ISO 23952 – QIF)
- 用語と特性(例:ISO 14649)
- 3D 可視化(例:ISO 14306-JT、ISO 14739 PRC)
- データパッケージ、組織、配信(例:ASME Y14.41、MIL-STND-31000B、HTML)