【シーメンスからは未発表?】富士通、シーメンスとの協業によりTeamcenter等販売、自社ソリューションとの組合せで製造業DXを加速、海外進出も
2021年4月12日、富士通はDX分野の強化に向けて、シーメンスデジタルインダストリーズソフトウェア(日本法人)と協業することで合意した、と発表しました。一方、約3か月経過した7月5日時点でも、シーメンス側からはWEB上などで発表情報としての掲載はありません。
富士通はこの協業を通して、「Teamcenter」や「Opcenter」をはじめとするシーメンス社のポートフォリオ「Xcelerator」の日本市場向け再販を行うともに、同社の製造業向けソリューションおよびサービス「COLMINA(コルミナ)」とも組み合わせて提供します。
また、設計と製造のものづくり情報をシームレスにつなぐ3D-BOP機能を、シーメンス社の技術支援を受けて開発する、としています。
さらに同社はこの3D-BOP機能を2021年7月より日本市場向けに提供開始し、その後、日本での実績をもとにグローバルでの提供・保守体制を強化し、2022年4月より順次、欧州、北米、アジアへとサービス提供を拡大していく予定、としています。
富士通の思惑は
富士通はプレスリリースの中で「国際競争に打ち勝てるグローバルでの変化対応力と、設計から製造をとおして環境に配慮したスマートなものづくりを実現するために、企画から、設計、生産準備、生産実行にわたる全てのものづくり情報をつなぐ統合的なものづくりソリューションの必要性が高まっています。」
そのために
「当社がこれまで培ってきた製造業におけるノウハウやものづくりをサイバー空間で再現するCPSの導入実績と、グローバルで広く利用されているシーメンス社の製造業向けソリューションにより、グローバルでの各拠点や各工程で個別に管理されているものづくり情報をシームレスに連携することで、市場変化へのスピーディな対応を可能とし、製造業の競争力強化とDX加速、およびSDGs達成に向けた取り組みを支援します。」
としています。
富士通の戦略、妥当性と今後の見通しは
リリース中にもある通り、製造業DXでは企業活動のすべてのプロセスをつなぐことができる体制を構築することが必要です。
しかしその中核であるPLMシステムについて強力なソリューションを自社で持っているとは言えない富士通にとって、今回の協業は重要なものであると考えられます。
同社はすでに保持している既存の製造業向け各種ポイントソリューションの価値だけでなく、これらとの全社的な統合を企画、提案できるインテグレーターとしての価値を、ものづくり事業のブランド名「COLMINA(コルミナ)」のもとに訴求、事業の拡大を図るものと思われます。
また従来から、シーメンスと提携関係にあるSAPともグローバル・パートナー契約をすでに長年にわたり保持し、世界的に展開可能な体制を構築していることから、これらを統合したシステム提供の可能性もあるでしょう。
まずはすでに構築している顧客とのリレーションを活用して国内での展開を図り、その後海外展開を進めます。
昨年(2020年) 10月に行われた記者説明の中で、COLMINA事業の年間売上は2020年の200億円から2023年に500億円、2025年に1000億円を目指す、としています。
シーメンスにとっての意義と今後の見通しは
一方のシーメンスにとって、国内有力顧客との関係が深い富士通は、シーメンスソフトウェア製品群拡販のための魅力的なチャネルです。
富士通に、国内現場での実績をベースとしたビジネス、インテグレーターとしての価値、そしてセールス力を期待しているものと見られます。
現時点では、今後の海外展開についてどのような協力関係を築くのかはまだ不透明な面があります。
今回の富士通のプレスリリースは「シーメンスデジタルインダストリーズソフトウェアの日本法人との協業」であり、またその中でシーメンス社としてのコメントは記載されていません。
また現時点(2021年7月5日)でシーメンスのWEBサイトにも今回の協業に関する記事は掲載されていません。これは、シーメンス本社としては今回の協業については現時点でまだ正式な方向性として位置づけられてはいない可能性を示唆しています。
【富士通プレスリリース】シーメンスデジタルインダストリーズソフトウェアとのパートナーシップにより、製造業のグローバル競争力強化とDX加速、およびSDGs達成を支援
国際標準に準拠したITシステムの提供へ
製造業では国際的な競争が激化するとともにさまざまな変化への対応が求められており、各社は海外生産や調達、国外企業の買収・提携に迅速に対応することが求められています。
そのため、各ITベンダーが提供するソリューションもこれに対応し、国際標準、もしくは事実上の標準に準拠、かつ社内システムと連携がとれるものが求められています。
これらの要件に対応するため、ITベンダー各社も海外有力ベンダーとの提携や買収を進めています。
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