シーメンスとGoogle Cloud、製造業におけるAIベースのソリューションで協業
2021年4月19日、Google Cloudとシーメンスは工場のプロセスを最適化し、現場の生産性を向上させるための新たな協力関係を発表しました。
シーメンスは、Google Cloudの先進的なデータクラウドおよび人工知能/機械学習(AI/ML)技術を自社の工場自動化ソリューションと統合し、製造業の未来に向けた革新を支援していきたい、としています。
「多くの企業ではAIプロジェクトが工場フロアの「島」で展開されていますが、グローバルな事業全体で大規模にAIを導入することに苦労しています。」
「Google CloudのデータクラウドとAI/ML機能をシーメンスのDigital Industries Factory Automationポートフォリオと組み合わせることで、メーカーは工場のデータを調和させ、そのデータの上でクラウドベースのAI/MLモデルを実行し、ネットワークエッジでアルゴリズムを展開することができるようになります。
これにより、製品の目視検査や、組み立てラインでの機械の摩耗を予測するといったアプリケーションが可能になります。」
注目を集める製造業、AWSもすでに製品を出荷済
工場では各種のセンサーからのデータを利用してAI/MLを活用することで品質向上やトラブルの回避が可能となり、大きな効果を上げるポテンシャルがあります。
これはソリューションを提供するITベンダーにとっても大きなビジネスポテンシャルとなっています。
Googleクラウドの競合であるAWSも製造業のソリューション提供に力を入れています。
アマゾン ウェブ サービス(AWS)、機械学習を使用して予知保全を可能にするサービスを一般提供開始
シーメンスは自社のソリューション群にAI/MLを組み合わせて大きな効果を上げることを目指しています。
同社は工場内プロセスの最適化にとどまらずPLMとの連携やERPとの連携も進めており、結果として企業活動全体の最適化を可能とする環境を整えつつあります。
今後の方向性は?
製造業の各企業にとって、もはや熟練技能者の属人的スキルに頼った改善だけでは国際的な競争に後れを取りかねず、新興国でも導入が急速に進んでいる最新ソリューションの活用にチャレンジしてゆく必要もあるでしょう。
DXを推進するためには、各業務プロセスのデジタル化を進めるだけでなく、業務や部門をまたいだ連携を進める必要があります。今回の発表により、すでに強力な顧客基盤やエコシステムを持っているシーメンスとGoogleクラウドの両社はさらに連携範囲をひろげることができるため、ますますその勢力を拡大することが可能になります。
一方、今回の発表は単に「協力関係の発表」であり、具体的な製品やサービスの発表やスケジュールの記述は一切ありません。上記の通りすでに製品やサービスが提供されているAWSよりその点では遅れており、今回はその対応策としてとりあえず行った発表である、というようにも見えます。
今後の具体的な製品・サービスの発表に引き続き注目する必要があるでしょう。
両社のコメント
シーメンス・デジタル・インダストリーズのファクトリーオートメーション制御担当副社長、アクセル・ローレンツは次のように述べています。「人工知能が工場の現場を根本的に変える可能性は、まだ尽きていません。多くのメーカーは今日もAIの “パイロットプロジェクト “に留まっていますが、私たちはそれを変えたいと思っています」「Google CloudのAI/ML技術とシーメンスのIndustrial Edgeや産業用運用のソリューションを組み合わせることで、製造業のゲームチェンジャーとなるでしょう。」
Google CloudのManufacturing and IndustrialのマネージングディレクターであるDominik Weeは次のように述べています。「今回の協力は、両者の長所を組み合わせ、製造業にAI/MLを大規模に導入するものです。産業用ユースケースにおけるAIの導入を簡素化することで、従業員の現場での重要な仕事を補強、支援します。」
シーメンスプレスリリース(英語) : Siemens and Google Cloud to cooperate on AI-based solutions in manufacturing