ダッソーシステムズ(Dassault Systèmes) 2021年第1四半期決算、製造業向けは回復途上

2021年4月28日、Dassault Systèmes (ダッソーシステムズ)は3月31日に終了した第1四半期の決算を発表しました。
それによると要点は以下の通りですが、比較の対象となっている前年同期(2020年第1四半期)は、その前の年(2019年第1四半期)と比較して新規ライセンス収入では既存事業ベースで 20%の減少, 総売上も 1%の減少であった点には注意が必要です。(以下、特に注がなければ対前年比は非IFRS、恒常通貨ベース)

【ダッソーシステムズによる発表】Dassault Systèmes Reports 2021 First Quarter Results

「既存事業ベースでソフトウェア収入が10%増加」

今回の発表ではこのように記されていますが、上記の通り比較の対象は業績が悪かった昨年第1四半期です。
今回から「既存事業ベース」には一昨年買収したMididataも含まれます。
増収の内訳ですが、SOLIDWORKSが約18%増(新規ライセンス、メインテナンス込)、MEDIDATAが20%増、CATIA/ENOVIAを含む製造業向け(インダストリアル・イノベーション : Industrial Innovation)は4%増です。

Software Revenue 18Q1-21Q1

その中の製造業向け(Industrial Innovation)について詳しく見てみましょう。
製造業向け(Industrial Innovation)全体ではSW Revenueは4%増、そのうちCATIAは1%増です。

グラフで見る通り、2018年以降全体として大きな成長はありません。今期(2021年第1四半期)については、CATIA, ENOVIAについては伸びていませんが、「その他」が増加していることで全体として前年同期比プラス1%となっています。この「その他」の内容については、発表時のコメント等から主にSIMULIAが貢献していると見られます。

「ライセンスおよびその他のソフトウェア収入は25%増加 」

「ライセンスおよびその他のソフトウェア収入」とは、ソフトウェア売上のうち定期ライセンスやメインテナンス料金(Recurring)を含まない「新規ライセンス収入」で、CATIAやENOVIAが中心です。
ここでも比較の対象となっているのは前年(2020年)第1四半期で、一昨年(2019年)と比べると、為替変動を考慮しない絶対額で下回っています。(2019年Q1 213.2Mユーロ、 2021年Q1 203.8Mユーロ)

New License Revenue

「EPSは1.14ユーロ、前年同期比28%増」

利益率が3.2%向上した結果、EPSが上昇していますが、この利益率向上への貢献としては売上増加が0.7ポイント、経費(OPEX)削減が2.5ポイントです。つまり、利益の向上は売り上げ増によりものというより、むしろ経費削減によるものです。

来期以降の見通しは

今回の発表では、次四半期と年間の見通しも発表されています。
それによると、本年(2021年)第2四半期(次期)の総売上(Revenue)の見通しは6-8%up、EPSは経費削減効果もあり +18-23%増加としています。

増収の内訳として、新規ライセンス(License)が+29-38%増、定期ライセンス収入(Recurring)が9-10%増を見込んでいます。

新規ライセンスは大幅な増加に見えますが、実際は昨年(2020年)第2四半期が対前年(2019年)大幅減だったことから、2019年同期と比較すれば同程度です。よって通常のビジネスを継続できれば、無理のない計画と思われます。

2021年通期の見通しとしては、新規ライセンス収入は、最大でも2019年を上回らないものとなっていますので、こちらも同様に無理のない計画と思われます。経費節減についても継続的に行われる見込みです。

3DEXPERIENCE戦略の状況は?

上に示したグラフでも見られる通り、製造業(Industry innovation)対象の売上では大きな成長の傾向は現時点では見られません。
数年前からダッソーシステムズは、総てのデータをプラットフォームを中心として統合し、開発プロセスはもちろん、企業活動全体を最適化する「3DEXPERIENCE」を戦略として掲げてきました。

最近特にデータの連携やクラウドの重要性が注目されているなど、ダッソーシステムズの先見性が証明されていますが、一方でこれがビジネスの数字に結びついているようには見えません。
今回の発表の中では、「Jaguar Land Roverが3DEXPRIENCEの適用を拡大した」という事例の紹介と、「トヨタ自動車では、現在18,000人の従業員に3Dエクスペリエンスを提供しており、14のプログラムに3Dエクスペリエンスを導入しています。」というコメントが発表されていますが、いずれも具体的な内容やビジネスサイズは明らかにされておらず、そのビジネス面での貢献度は測りかねます。

今後プラットフォームの優位性を生かして顧客プロセスの変革を実現することでシステムの価値を高め、それによりビジネスの成長を実現できるか、が注目されます。新たな戦略、例えばオープン化の推進によるパートナーシップの拡大、有力他社との提携、等も検討する必要があるかもしれません。

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